研修名:介護分野における外国人人材について
日時:令和元年6月12日
場所:兵庫県民会館 パルテホール
講師:中井 孝之 氏

内容:
 日本の介護分野がどういう状況になっているのか、どういう仕組みがあって何をどう考えていったらいいのか、そういう事について少し私の分かる範囲内でお話しさせて頂きます。
 今日本で外国人の方を介護分野で受け入れるには、EPA・在留資格「介護」、技能実習・特定技能1号の4つのカテゴリしかありません。一番最初がEPAです。2番目が在留資格「介護」です。これは平成29年9月1日から法施行されている制度です。それから11月1日からできたのが技能実習生、最後平成31年4月、平成の最後に出来たのが特定技能1号。今日はこの4つをベースにしながら少しお話をしようと思います。
 EPAは前からありましたが、あくまで2国間協定(経済連携協定)です。現在インドネシアとフィリピンとベトナム。この三国としか連携してない。
 入国は特定活動で入国して来ます。これしか入れません。訪日後研修した上で介護施設病院等で就労・研修して特定活動として就労します。基本的にはアルバイトは週28時間しかできません。国家試験を受けて合格すれば引き続き就労が可能という事です。今現在、国家試験の受験資格はこの就労している4年間で受験しなきゃいけないという事です
 現実に日本に来て試験を受けて合格された方々が、今どういう状況におられるか。もともと支援をされて先ほどあった介護施設とか病院とかという所で未だに働いておられる方の割合は多分3割以下です。
 学習支援上の支援とか試験料の配慮もしています。これだけ手厚くしていても合格率は3割とか4割。外国の方が来て働くという前提条件ではこの仕組みEPAという仕組みは非常にレベルが高い。
 在留資格「介護」、平成29年に新しく創設をされた訳です。こういう形で外国人留学生として入国をして、施設に入って介護福祉士の国家試験を受けて介護福祉士の資格を取るという仕組みです。EPAとは全く構成が違う。留学期間というのが一定期間あるという事です。
 EPAとこの在留資格「介護」と特定技能は就労先を固定化できません。自由に移り変わる事が出来ます。
 一生懸命色んな形でサポートしても、ある日突然人がいなくなるというリスクはEPAも在留資格「介護」も特定技能も有り得るという事です。それが無いのは技能実習制度だけです。それも全てとは言いません。
 難しいという事ですね。でもやらない手は無い。EPAもそうです。どれだけ残ってくれるかは皆さんの腕次第という感じです、養成校に通わせて週28時間の就労させる事業所がどういう風にフォローアップするかという事です。ちなみに来た人達が一番困ると云われているのは、日本人との生活習慣の違いです。
 養成校ルート以外でも実務経験のルートで資格を取得という道を開いたという事。技能実習資格「介護」3年以上の実務経験を加えて実務研修を受講した後で国家試験を合格する。要は養成校以外でも受験資格を与えるという仕組みが新しくできた。
 続いて修学資金の貸付、これが新しく予算化される。これは国の制度ですからこういう制度仕組があるんですから活用しない手は無い。受入環境整備事業という31年度予算でもこういうお金が付いていて、まず一つは試験実施機関に一定程度のお金が出る。この貸付は特定技能用として31年度からです。それまでは無かった。ここからが外部受け入れ支援事業として受け入れ施設に集合講習等をやるという事についてお金を付けた。民間団体で養成校等が今やってますけれども日本語教育の支援と相談支援をするという仕組みがある。
 技能実習制度の関係については、元々目的が違う。ここに書いてあります様に開発途上地域への技能等の移転を図りその経済発展を担う人づくりに協力するという事で、目的が違う。
 日本で働いて働き先を確保してそこで働く人材を養成するという事では決してない。じゃここに何が意味があるか。皆さん方は今現場で様々な介護とか色んなシルバーのサービスの仕事されている方がいますけど、これから今皆さんが実際に働いておられる職場、会社そういう所が今後どうなっていくのか。
 対象者はいます。人手が無いです。その会社はせっかく自分で作り上げて40年経つ。このままダメにするのか。もったいないです。この時に日本の1つの方向として、グローバル化して世界で戦う。
 世界で働いて仕事をしていくというのも一つの方向性だろう。そういう意味で言うとこの技能実習生で来る方々は、ベトナム・タイ・ミャンマーやフィリピンに帰られて、様々な国に帰っていく時に日本語が出来て日本の介護が解って日本の仕組みが解って、そういう方々と一緒になってビジネスモデルを作っていく事は出来ていくのかなと思います。
 私共が、この4つの制度の仕組みの中で技能実習の方に手を挙げさせて頂いたのはそれの価値観です。国際貢献と併せて日本の元々シルバーサービス産業で頑張っておられる方々が将来そのノウハウ・力を世界で発揮して頂きたい。
 この制度は。国際協力、国際貢献です。裏返すとそういう仕組だからこそちゃんとした人を入れていかなきゃいけないし、ちゃんとした事をしなきゃいけないという責任はあるという事です。
 技能等の適正な習得、習熟又は熟達の為に整備され、技能実習生が技能実習に専念出来るようにその保護を図る体制が確立された環境で行われなければならない。これは基本理念として書かれている所です。
 ちょっと他の道とは違うという事です。最長は5年間です。唯一他と違うのは、5年間同一職場です。同一職場でないと帰国せざるを得ない。他に逃げる事が出来無い。帰るしか無い。帰っていいとか駄目だから返す。そういうのじゃなくて。事業所側からすると最長5年、最低3年ですが3年間は間違いなく自分の所の事業所で働いてもらう事が可能という事です。
 後は腕の見せ所ですね。現実の問題として。ちゃんとした勉強して頂いて国家試験を受ける道も勿論開かれている。そこで管理職になって頂くという事もやり様によっては5年以降についての道も開けます。それはさっきの特定技能とか在留資格「介護」いうルートが有る。単純に言うとここがスタート台のはずなんです。基本はこういう仕組の方が良いという事です。
 その上で団体管理型と企業単独型です。通常は団体管理型というのは営利を目的としない団体で学習を実習するという風になっていて受入れの実習実施者、企業とないしは法人等で連携をしてやっていくという仕組み。企業単独型は現地の事務所とか支店とかで雇ったうえで働いてもらうという仕組みを取って日本に来てもらう。これは非常に少ないですね。団体管理型の場合については送り出し機関となって政府があって、訪問して選考して決定をする管理団体との間において送り出し機関との関係と契約を結んで、送り出し機関としては受け入れ企業と日本における実習機関の間で許可制度と入局管理の制度を使ってそれで計画認定を受けて受け入れをするという仕組みです。
 皆さん方もおやりになるんであれば管理団体がちゃんとした所かどうか。送り出し機関との関係がちゃんと結んで良い所かここを見極めない限りはここの人を使うとリスキーです。
 逆なリスキーもあります。ここです。実習実施者、外国の方じゃなく日本人の教育ですら出来ないのに、そういう人間がここに居るとものすごく問題が多い訳です。だから実習機関としてなり得るそういう所が何処に本当にあってちゃんと受け入れるかという事を見極めないとデンジャラスです。
 試験通らなかったら帰るしかないですからね。だからこの仕組みを作るんならちょっと言い方悪いですけど業界毎とか自分たちのエリア毎でも良いのでちゃんとした仕組みの物を自分達自身で作り上げていかなければいけない。その作り上げた上で受け入れをしていくという事を考えて行かないといけない。
 要は他人の事ではなく自分たちの事なんです。そういう受入れの考え方を持って尚且つ外国の方を受け入れるというのは地域で受け入れるんだという事を考えて行かないと多分上手くいかないという風に思います。
 企業単独型も簡単に言うと計画認定が下りれば、すぐ入国して来ます。社員ですから、雇用環境的にも問題なくちゃんと給料も払う仕組みです。
 介護分野は。そんなに多い企業がやりきれる訳ない。1事業所当たり限界50人以下だと5人以下です。最低が3人ですから。3人しか受け入れない。非常にコストが掛かりすぎだと企業は思う。
 地方入国管理局は結構厳しいです、受け入れについて。在留資格の管理については非常に厳しく過去に問題を起こした所は、すぐ「うん」と言ってくれません。
 受け入れ実習実施者についても管理団体についてもそうです。ただある意味そういう様な送り出し機関の要件もここに書いてある通り非常に結構難しいです。だから先ほども言ったように留学生とは大分趣が違う。厳しさがある。それでもまだ上手くいくかどうか解らないという事です。
 介護分野で日本に来た技能実習生の4人の方を、今年4月宮崎県で初めて試験をしました。結果的に全員合格です。その時、解かったのはちゃんとやってるとちゃんと理解をしてちゃんとした介護をしていただける。皆さん、すごく真面目です。その方々が何処の国かというのは別にしまして基本的に真面目です。日本人とのコラボレーションが上手くいってる。今まで60件の試験合格者を出していますが、たった1人です、不合格にしたのは。これは唯一試験の中で欠格条項があって、その欠格条項に抵触したので落ちたので再受験できる。だからほぼ皆さん真面目にやってれいば殆ど受かる。だから3年間は入国が可能になる感じです。最高3年目と言ったのは1年目で試験が評価される、3年目で評価され5年目で優良団体の実施機関の上で5年目で最終試験で卒業という事になる。
 区分としては団体管理型として入国1年目で在留資格「技能実習第1号ロ」2・3年目が「技能実習第2号ロ」4年目5年目が「第3号ロ」という風に在留資格の区分が変わっていきます。
 そういう意味で言うとこの区分変更をちゃんとしないといけなくて、その為にはそれぞれ毎に初級・専門級・上級という形で試験制度が組まれていて実技試験は必須です。1年目だけ学科試験がありますが後は任意です。
 技能実習で、介護は後から追加された強化分野の中の1つです。人数的に小さくなった背景は勿論問題を起こした所もあった。
 管理監督体制を抜本的な評価と併せて対象職種の拡大というのがありました。それから実習期間の延長というものが新しくあって、受け入れ枠の拡大があって企業団体に多く受け入れるという事です。
 技能実習制度の見直しに関する法務省、厚生労働省これは労働サイドの仕掛けでございますが報告書が出ていまして、修得とか技能移転の確保とか団体仕組みとかが有って。質を担保すると共に利用者の不安を招かない様にする。ある意味そこは非常に重要な視点です。処遇の事は当然だという話ですが、その上で制度本体見直しとか固有の要件と新たな制度設計しなさいと言う風に言われて入ったという制度です。
 結構だから簡単な制度では無いです。仕掛けとしては関係者間の合意で医療介護の合意、評議会を作れと言われて評議会の準備会そこで業界内の合意、そこで医療系から福祉系まで含めて全部が集まって合意という事です。
 非常に現場の質が問われてきます、技能実習。だからある意味、どういう介護しているのかという事を考えなければという風に云われています。海外のニーズ調査とか行官庁への相談とか様々な事があって、評価試験の基準案作成を思考して、業務範囲の明確化、何を移転するかという業務って何でしょう。
 それから計画の修正基準案を作成して専門家会議であったりパブリックコメントが有って認定基準の適合性の確認をして、結果としこういう基準で出されてるという状況です。
 固有要件にはこう書いてあります。コミュニケーション能力の確保。読んでいただくと日本人的に言うと当たり前のことだと思いますけど外国の方は結構大変です。ましてや地方に行けば方言もあります。普通の標準語すら覚えるのは難しいのに方言まで言われたら困るのですが、あんまり大阪の施設とか違う所行ったりしますと、結構それはそれでコミュニケーションのツールとしては非常に解りやすい。
 ただ国家試験になってくると試験の時には標準語になってしまうので、そこはちゃんと教えて行かないといけないのでその差はありますがコミュニケーションの点で言うと方言があったりする方が非常に取りやすいという事も事実です。
 必須業務は身体介護、関連業務は身体介護以外の支援、これは、現状の国家資格の研修テキストをベースにして作られたからこういう状況になっている。
 評価システムとしては到達度合い、実習指導者の支持の下であれば決められた手順に従って基本的な介護が実践できる。あくまで実践です。
 2つ目、自ら介護業務の基盤となる能力や考え方等に基づき利用者の心身の状況に応じた介護が一定程度出来る。上級5年目は自らが考えて出来る。この到達度合いは違いがあります。
 技能実習の介護の場合で言うとN4以上の場合は算定が8か月後から出来ます。N2以上だったら入国後講習を受けたら算定は、今ベトナムでN2の方が居ますので丸々2か月経った以降は丸々基準上配置できる。EPAの場合も同じですね入国から6ヶ月6ヶ月の算定。だからと給与上で言うと報酬の対象者としてカウントできますから請求できるし人事基準上もカウントできる。これはこれで価値が高い。
 技能実習は3年丸々居る訳ですから3年間でどういう人間関係を作れるかという事ですね。
 特定技能「介護」です。この分野を穴埋めしてる技能実習があって従来の在留資格専門職があって介護という専門性があってその間を埋めるというのがあって、ここからの仕組みが本来の仕組なんですが、ここを急きょ入れ込んじゃったんです。
 1号のポイントは在留期間を1年で6か月又は4か月毎の更新で通算で上限5年まで。技能水準試験等で確認をします。外国人は技能実習2号、3年で終了した人が居れば試験等免除ですよという事。言い方を変えると技能実習2号のレベルの技能水準を持ってる方だと立証されている方だという事。
 皆さん実際来られた方がどれ程技能が修得できているかは未知数です。何故かと言うと技能実習制度は3年かかってやるんですよ。コンピューター試験で良いですよと言う人が外国ですよ、日本でやるのでなく外国でやるんです。
 全部外国で。正式に言うと南米までOKです。チリ、アルゼンチンです、東アジアだけじゃないです。そういう所でやった試験出来た人は日本で働いて技能実習1号で一緒に働きましょうと言われて出来るかどうかチョット不安です。
 受入機関と登録支援機関による支援対象、この受入機関と登録支援機関が非常に重要な要素を持っている。さっき管理団体等と言いましたが同じですね。
 これが何処までちゃんとするかは未知数です。この4月から始まったばかりですから。余程多くないと多分上手くいかない、心配です。受入機関と登録機関の内容を見て適切か如何かと言われると非常に厳しいかもしれない。ちゃんとやってる所があれば、そういうとこを選ぶしかない。
 受け入れは外国人材の場合、ビザ発給されてから働くという事が始まる。
 この受入機関の就労開始は基本的にさっき言った算定基準上は、スタートからそのまま入ります。だから基準としては報酬対象になりますので安心は安心ですが仕事が出来るかどうかは解らない。誰も見たことがない。
 運用方針として介護分野は5年間で6万人を見込んでいます。1年間で1万2千人です。はっきり申し上げてこの数字って非常にデカイ数字です。
 これは真面目に本当にやれて上手く行ったら特定技能で入って来られる方々は5年間の人材としては出来るかもしれない。ただ最初言った様に何処を選ぶかは本人次第です。事業所には選択権がありません。余程関係性を作らないと。
 これはCBT(コンピューター・ベースト・テイスティング)という方式でやります。これは海外でこの様な試験をする団体がいて、国が今試験問題を作っています。今厚労省のホームページで第一回試験がこの4月13・14で行われて試験結果113人中両方で合格した人は84人、合格率74.3%この方々が入って来られるという事です。
 最後にEPAの事で先ほど言いました5年間に渡って勉強してきたけども試験に合格しなかった。これについては特定1号の方に当たって技能試験・日本語試験を免除するという事になって更に最長で5年間だけ居る事が可能になってきます。だからある意味EPAの方は、これを選択すれば帰らなくていいという事です。
 特定技能について新たな在留資格が、制度概要の中に新しく入ってきて、先ほどの技能実習の2号で3年を卒業した方は特定技能1号に行って特定技能で5年居る間に国家資格を取ってしまうと在留資格「介護」になる、という事はずうっと居る事が可能になります。
 技能実習をしながら最終的に法人ないしは事業所で幹部にしていくという道も無きにしも非ずという状況に成り始めている。どれを選択するかというのは大変恐縮でございますが1つ1つ良さも悪さもあるリスキーさもあるメリットもデメリットもあります。
 全部するというのも手です。とにかく手を出して。逆にどれか1つか2つに固定化する。それもやり方だと思います。ただ他人に任せていると良い話は殆ど有りません。やっぱり自治体と一緒になってやっていくとかですね。
 今東アジアでは2つの国が競合しています。1つはドイツです。もう1つはオーストラリアです。向こうの国の方が魅力的かもしれない。日本以上に、将来的に。現地の皆さんはどう思われますかという事です。これに中国が参入してきて、中国に行く人が多いかもしれません。
 日本の介護は何を世界の人にPR出来るのでしょう。何が良さなんでしょう。技能実習の中で様々な検討がなされています。それはあくまで単なる介護技術を教えるという事で無くて、人を1人技術支援型で支えていくという事が重要な要素を持っていて日本人はそういう介護を一生懸命やろうとしているという事です。
 皆さんの所もそういう風な事をぜひ考えて頂いてより世界の中における日本という国をPRして頂いたら有り難いと思います。