介護事故予防・事故事後対策研修~介護現場における基本視点と取組み~ 平成28年11月11日、社会医療法人慈薫会介護老人保健施設大阪緑ヶ丘事務長柴尾慶次氏をお招きして介護事故予防・事故事後対策研修を開催しました。

〔研修のポイント〕
事業所で事故は起きないはずはなく、事故は起こる。ゼロにするのではなく、リスクマネジメントを適切に行うことが必要。リスクマネジメントはPDCAサイクルのマネジメント・ツールを用いる。予防重視のリスクマネジメントづくりが基本。そのためには、リスクアセスメントを行いマニュアルの見直しをすること。見直しをする際には、よりシンプルにマニュアル・手順を見直し、「覚えたくなる」「見たくなる」「使いたくなる」マニュアルにすること。

事故発生時の対応で一番大切なことは、初期対応を誤らないこと。事後対応として大事なのは「記録」。正確な記録は現場を助ける。リスク要因の分析は、インシデントを多く集め、防げる事後を防ぐことができる。事例・統計、介護事故の判例などから学び取ることも多く、介護施設でのリスクの高い領域は、転倒による負傷、薬物によるアレルギー反応、所有物の紛失損傷、病気診断・治療上のミス、投薬ミスなどが挙げられる。また、介護事故の判例として、①結果予見性、②結果回避性が争われていることが多い。リスクマネジメントは戦略を立て、業務をマネジメントする必要がある。事前対応(予防)はPDCAをうまく回していくことが大切。予防重視の考え方が重要。事故は初期対応がすべて。

転倒リスクは内的要因と外的要因に分けられる。床が滑りやすいことによる外的要因を減らせればリスクも減る。建物構造が利用者の生活感覚に合っているかどうかを検証していく必要がある。事故対応は初期対応を誤らないのが大原則。初期対応は「救命」、「安全」、「通報」が重要。「安全」は頭部打撲の場合等は動かさないことが安全対処で、その上での救命・通報となる。「記録」はその場の再現性が重要なので時間・場所・状況などの事実だけを正確に記すこと(周りに誰がいる等、立体的に)。新任職員だから「わからない、できない」は通用しない。勤務の最初から訓練しておくこと。

事故対策は初期対応のマニュアル、担当者の窓口一本化が大事。介護事故の事故責任には4つの責任(道義的・刑事・民事・行政)と7つの処分(謝罪・業務上過失傷害・業務上過失致死・債務不履行責任・不法行為責任・指定取消・効力停止)がある。刑事的・民事的責任を問われなくても要支援・要介護の低いハイリスクの方については道義的責任が免れない。結果の予見性と結果の回避性についてどのように対処していたのか問われる。事故報告書は、報告書を裏付ける記録があること、ケアプランに基づく支援が確実に実施されていること、その記録をしておくこと。

現場において、事故をゼロにするということは不可能に近いが、それを前向きに戦略としてリスクマネジメントや事故対策を行うことがプラスとなる。リスクマネジメントをポジティブにとらえ、施設の戦略としてアピールしていくことが大切。事故はないほうがよいが適切なリスク管理により、その事故を未然に防ぐ方法を講じ、そして考えられるすべてで実践し、予防することが重要。やむを得ず起きてしまった事故に対しては、「初期対応を誤らない」ことが鉄則。まず謝罪すること。そして隠さない、共有すること。解決に向けた取組みと再発防止を。「いい仕事がしたい」「介護の現場に地震と誇りを築く」ために。と、まとめのお話をされました。