講演会(介護経営戦略研修)
2017年6月14日
平成29年6月14日、「2018年介護保険法改正ポイント最新解説と環境変化を追い風に変える“勝ち組”“新時代型”介護経営戦略」と題し、(株)ケアビジネスパートナーズ代表取締役の 原田匡氏をお招きして講演会を開催しました。
「2017年度・2018年度法改正トピックスとして、介護保険法改正のポイントは大きく分けて、保険者機能の強化、人財確保、サービスのあり方、費用負担、地域共生の5つ。保険者機能の強化・見直しでは、一言でいうとインセンティブ。保険者として高齢者を可能な限り重症化させないで維持改善し、それをマネジメントしていくことが求められている。人財確保については、なかなか充足できないなかで、ロボットやITの活用、促進をすすめていこうとする流れがある。
一方で、未就労の女性、定年後のアクティブシニアの方々を労働力として活躍できる資源とすることなど、国内では眠れる資源・資産の取り込みが必要となってくる。
平成28年3月に、39箇所の事例を載せた保険外サービス活用ガイドブックが出された。それに載っていない事例として次のように紹介したい。
「24時間365日、老人ホーム同等のフルパッケージサービスをご自宅に」が売り文句の在宅老人ホームがある。定期巡回・随時対応サービスに生活支援サービスを付けたのがこの仕組み。「できるだけ自宅でサービスを受けたい、自宅で最期を迎えたい、でも家族に迷惑をかけたくない」との声を受けたもの。「自宅にいて24時間365日、私たちが支えます。」というものがメッセージ。こお客様のニーズに合わせたサービスである。お客様のニーズがどこにあるのか、しっかり考えることが必要で、そこに答えがあるはず。お客様・家族は、保険内であろうが保険外であろうが関係なく、「私の悩みを解決してほしい・助けてほしい」である。「〇〇円払うからお願いします。」というのが顧客視線。私たちは介護保険サービスで考えているが、お客様は、そんなことはどうでもよいのであって「その金額ならば払うのでお願いします」となる。お客様の立場に立ったストーリーで組み立てていけば展開の余地はたくさんある。お客様は介護保険に関わるのはほんの一部であり、それ以外に必要な生活支援がほとんどである。「私たちは何ができるのか」、という考え方でいけば、できることはたくさんある。そして比較的低価格で提供できる仕組みが出来るかもしれない。
花咲美村(山口県)はデイサービス2箇所とサ高住とシェアハウスを経営している。ここでスーパーをやることとなった。何年も前にスーパーが撤退してしまい、移動手段のないシェアハウスの方々が買い物に困ってしまったのでスーパーを始めた。普通は、介護事業所の開設から考えるが、花咲美村は、ご利用者の生活から事業展開を考えた。その結果、「この地域で必要な」事業をすることとなった。ここはショービジネス型スーパーを展開しており、提供(販売)する側に商品を置いてもらった。提供する側は販売開拓せずとも手数料を引かれるだけで商品が売れるので充分採算がとれる。ここは生活に必要なもの、地域に必要なものから作っていった。地域において足りないもの、必要なものをコンテンツとして持っていくこと。この介護事業者の方は、地域の困りごとを知っている。地域に必要な事業との組み合わせにより事業展開していることがすばらしいところ。総合事業は、「可能な限り元気で過ごすしくみを作ること」がコンセプト。
甲信越地方のある事業所のこと。事業者は高齢者の学校を作りたかった。そこで、「シニアアクティブスクール」として開設。午前は運動、午後は個々のプログラムで頭を使う内容となるもの。総合事業の求められているものは、「介護予防・機能訓練」と「認知症予防」の2つ。であれば、そこに資する内容のものをやろうとなった。「この町の方が元気になってほしい。将来、総合事業が始まれば、この授業を認めていただきたい、地域の方のために役に立っていきたい」との思い。保険者はこの授業の単価を3,000円(1授業あたりの時間は長くなった)として認めた。総合事業として行うので、お客様負担は3割負担、1,000円そのままで単価3,000円。お客様負担は1/3。いま、たいへん流行っていて、かつ、お客様に喜ばれている。総合事業だけの枠組みだけで考えるのではなく、少ない支援者で、いかにたくさんの方に喜んでいただくかという考え。1人の先生で10人、20人を対象に授業をするということは、効率のよい事業といえる。そしてこれが介護予防につながっていく。お客様が使いたいと思える事業があるかどうか。どうすれば、お客様が喜んでいただけるものを作れるか、ということが、総合事業以前に必要なのではないか。その上で介護のエキスパートである介護事業者であれば総合事業に展開できる。
島根県のショッピングセンターの中の「ショッピングリハビリよこたの郷」。(有)クオリティーライフは総合事業で何か出来ないかと考えていた。しかし、今までの延長線上の、とおり一辺の総合事業ではつまらない。もっと生活に密着して、生活に張りが出るようなことができないか。一方で、ショッピングセンターは地域に貢献したいとの思いがあった。ここにショッピングリハを考えた人(OT)がいて、高齢者専用カート「楽々カート」(リハビリで使用する歩行器の改良)を開発。この三者が共同で事業を始めた。一般のデイサービスの送迎車両が必要でない時間なので、デイサービスとショッピングリハがうまくはまり込んだ。喜んでいるのはご利用者もショッピングセンターも同じ。ご利用者は近所や子ども・孫の注文も聞いてくるようになった。ご利用者にとっても潤いとなってきた。
総合事業はこのようなもの。利用していて楽しいものとなる。私たちは介護の面だけから考えていないか。既存の事業の思考パターンが決まってしまっている。私たちは、今までパッケージビジネスを行ってきた。これからは、脱却していく時代である。より良いサービス、信頼のある事業なら安心してお客様が払っていかれる。そこに事業としての可能性があると思われる。介護保険事業者は高齢者のニーズをいっぱい掴んでいる。事業は研究開発といえる。ここで得られた知識をもとに、もっとお客様が喜ぶサービスを作っていくことである。そうすることによって高齢者の健全な事業が増えて、お金が回っていき経済活動が活発になる。
この業界ほどお客様や家族のことを思って仕事をしているところはない。それを「どういう法人であるか」など伝えていかなければならない。そこが差別化であると思う。法人としての哲学や社会観をどれだけ伝えていくのか。いろいろな方法があるが、どんどん発信していくことで信頼していただき、その積み上げで信頼関係ができていく。そのためのテクニック、ハウツウがどれだけなのかにかかってくる。やらない会社は勝てない。やる会社に集まる。規模が大きいから勝てるものではない。強い会社が勝つ。強い会社とは、お客様から選んでもらえること、ファンが多いことである。」とお話ししていただきました。
まとめとして、「我々は、介護保険を活用した介護事業を営んでいる。その価値(介護事業)を提供することは手段である。例えばデイサービスは手段であり、私たちは、このサービスを通じて何かをお客様に提供したいと思っている。「残り少ない時間の中で、できるだけお客様に笑顔でいてもらいたい、そのようなお手伝いをしたい。そのためにデイサービスを行っている。」という事業所があった。方法は違っていても、まだまだやれることがたくさんある。もう一度、原点に立ち返り、頑張ってほしい。」と結ばれ、受講者一同、感銘の受けた講演会となりました。