研修名:感染症予防対策研修
テーマ:高齢者・障害者事業所の感染症予防と対策
日時:平成30年10月19日
講師:兵庫県立がんセンター 感染管理認定看護師 和田二三氏

内容:
 感染対策は、常に行うもの。流行期だけ、事件が起こったときに頑張るものではない。
日常的対策(標準予防策)をきっちり行っているかどうかが明暗を分ける。これを行っ
ていると流行・集団発生時の対策を講じなくてもよい。すべての利用者に標準予防策を行い、感染を疑われる利用者に対しては、その上で接触・空気・飛沫の感染経路別予防策を行うこと。
 高齢者の感染リスクは、過去の治験経験による多剤耐性菌の保菌が考えられること、免疫機能低下による外因性感染を受けやすいこと、生体バリアが破綻しやすいこと、加齢による内因性感染リスクがある。重篤化させないためには、早期発見が鍵となる。「何か変」という感覚を大事にすること。
 感染症は「病原体→病原巣→排出門戸→感染経路→侵入門戸→感受性宿主」のループになり排出門戸の経路遮断が必要。病原体そのものは清掃・洗浄・消毒・滅菌で減らすことができる。感受性宿主は感染をもらった人の免疫状態が高いかどうか、元気かどうかによって変わる。この6つが揃って感染症が成立する。感染を防ぐための方法は、6つのループを遮断すること。遮断するには、①病原体をなくす→清掃・洗浄・消毒・滅菌、②感染巣→治療、③排泄門戸→経路の遮断が必要。
 感染経路は、空気感染、飛沫感染、接触感染の3つで8割方は接触感染。感染経路のしくみとして、感染している人と直接触れ合うこととその人が使ったもので感染することの2つの経路がある。飛沫・空気感染経路は、飛沫が近くの人に付着する・吸い込むことにより感染する。空気感染は、結核菌・麻疹・水痘から。麻疹・水痘は抗体があればうつらない。接触感染は、今からの時期としてノロウイルス、O157など。知らない間にうつるのは角化型疥癬。
 組織で取り組む感染対策は、管理者(施設長)の高い感染対策意識のもと、感染管理体制の組織化、感染管理担当者の配置、従業者の管理者・感染管理担当者への支援(協力)体制の構築、協力病院・保健所との連携を日常的に行うこと。入所施設は生活の場である。排泄物への接触機会が多い。ケアは介護者が行っていて、その介護者は医学的知識がほとんどない状態である。だから、事業所として感染対策に関する指針を立て、感染対策マニュアルを作って手順書を全員が把握できていなければならない。「マニュアル・手順書」があることと「感染対策を実践している」こととは違う。入職時、定期・継続研修体制を確立し、対策を遵守しているか、常にチェックしておくことが大切。 
 グループディスカッションではテーマを設け、それぞれの事業所における現状と対策・課題について話し合った。最新情報が共有できたことや他の事業所の現状が共有でき、また、講師の的確なアドバイスを得ることができ、有意義な研修となった。