ターミナルケア研修
2018年9月14日
研修名:ターミナルケア研修
テーマ:平穏死を見据えたターミナルケア
日時:平成30年9月14日
講師:社会福祉法人関寿会特別養護老人ホームはちぶせの里 統括管理者 中野穣 氏
内容:
人生の最期の自己決定は自分がどう死にたいのかである。どのような生活風景のなかでターミナルを迎えたいかは、自分の人生における最後で最大の選択・自己決定。その最後の場を支えていくのが看取り。倫理的に適切な見取りとは、①無益な延命治療をしないで自然の経過で死にゆく高齢者を見守るケアをすること、②見取りに入る条件や医学的に末期であり治療の無益性が明確なこと、③積極的治療を望まない本人意思があること、④家族の同意があること、⑤意思決定に際して手続的公正性を確保すること、⑥社会的コンセンサス(同意)があることである。
昔は家で家族に看取られるのが前提であったが、今は在宅見取りでも家にこもらず外へ出ていく時代。ショートやデイを利用する。通所系・滞在型では、家族・主治医が不在でサービス利用中の心肺停止時の対応が課題。この場合、看取りの取り組みを証明することが困難であれば、救急搬送する。第三者であるサービス事業者の立場であれば搬送する。デイ利用者の看取りは口約束であればサービス事業者は困るもの。看取り時の緩和ケア、事故における救急対応は共通理解が必要。サービス事業者と救急隊のDNAR(患者本人または患者の利益にかかわる代理者の意思決定を受けて心肺蘇生法を行なわないこと。ただし,患者ないし代理者へのインフォームド・コンセントと社会的な患者の医療拒否権の保障が前提)をどのようにつなげていくかが課題。
共通理解とは、①心肺停止時に「心肺蘇生」、「AED」、「救急搬送」はしない、②緩和ケア、事故による怪我等に関する治療は積極的に実施、③看取りにかんする意向に変化があれば医師等専門職に表明(意向はいつでも変更可能)の3原則。ここまで説明すると家族は理解され、安心される。
ローウェンバーグとドルゴッフの「倫理原則スクリーン」では、より上位の原則の達成が、より下位の原則の達成に優先する。①命を守る(生命の保護)、②公正・中立(平等と不平等)利用者・家族に平等に接すること、③主体性の尊重(自主性と自由)自己決定、最期まで自宅で看取って欲しい、④最小限の被害(最大利益・最大福祉を優先)自宅で看取りしていて痛みが激しいとき、ケアマネとしては最大利益を優先して救急搬送するのかどうか、⑤生活の質、⑥プライバシーと秘密保持、⑦真実性と完全な情報公開の順となる。看取りそのものが倫理的ジレンマであり、命を守る事なのに主体性(自己決定)をすることになる。命を守ることと自己決定の倫理のぶつかり合いとなる。
グループワークでは、自発的・積極的安楽死を望む方と家族やその方に関わる医療等従事者の立場から考える、非常に重くて難しい問題をテーマとして話し合いました。いろいろな意見が出ましたが、どのグループからも、その人に寄り添うことを基本にしていくことが基本であるというような意見でした。
最後に「看取りはプロセスを踏みながら自己決定を優先する時代。しかし、在宅での看取りはQODを考えたときに、結果的に救急搬送したほうがよかったとなることもある。不安な場合は1人で抱え込まずに、看護師・家族・ヘルパーなどに相談すること。そうすると客観性が見えてくる。「私ならどうしてほしい。」とのみんなの意見を踏まえ、みんなで決める習慣づけがあれば、心が軽くなる。(整理・共有できれば心が軽くなる)1人で決めかねるときには、上記①~⑦を整理相談して、本人の最大利益最大福祉を考えてプロセスを踏めば整理しやすくなる。」とまとめのお話をされました。