平成29 年11 月24 日、関西福祉科学大学 社会福祉学部教授 都村尚子氏をお迎えして、認知症セミナー~“バリデーション”認知症理解と適切な支援~を開催しました。

〔研修のポイント〕
バリデーションとは、認知症の方へのコミュニケーション手法。コミュニケーションによって本当にその人が言いたい事を「腑に落ちて」受け止められること。認知症の方の言動には必ず理由があり、その理由を私たちが獲得して、その障壁や問題や課題を取り除かなければならない。表面的な行動だけを変えようとしても何も変わらない。言動の奥の理由を聞くこと。「帰る」と言っているのには理由がある。
 人間の感情の奥には基本的欲求がある。行動には理由があり、その行動を満たそうとする。それが何かをできるだけ聞いていくこと。
 私たちは、言葉と態度を一致させて相手と向き合うこと。言葉だけでは一致していない。「本当にあなたの事を分かろうとしている」ことが伝わらないといけない。これはバリデーションのテクニックでは「カリブレーション」といい、最大のカギ。感情を観察し、私たちが一致させること。「あなたをありのまま受け入れている」ということを示さないと本当の話は出てこないし何も変わらない。表情を合わしながら「あなたを受け入れているよ」と共感すること。悲しいときにいっしょに悲しんでくれたら、悲しみは半減する。バリデーションは言語的テクニックよりも非言語的テクニックのほうが重要。どんな重度の障害があろうとも、どんな重い病気で苦しんできても、その人一人ひとりの人生の意味や価値が存在する。「それでも私は生きている」と思いたい。だから多くの認知症の方はそれを獲得されようとしている。それを確認しようとされている。認知症の方の行動の奥にはそれがある。 
 私たちは人生を確認しておかないと逝けない。それが人間の基本的欲求の一つ。自分の人生の価値。それを確認しておかないと逝ってはいけない。振り返って生きてきた価値がある。これを統合感という。老年期に獲得せねばならない統合感。頑張ってきたと思って死んでいきたい。それができないから絶望、嫌悪の死を迎えねばならない。誰にも認めてくれない。振り向いてくれない。バリデーションはこれを認め、振り返る作業。
 最後に「そっと寄り添ってくれる人がひとりでも現れて『苦しいね』と温かい優しい声で言ってくれたらその苦しみは半分になる。そして、暖かい手で肩をそっと包み込んでくれたら不安も半分に。それが『バリデーション』。それは、誰にでも能です。自分を見つめる少しだけの勇気と認知症を生きる人への思いさえあれば。これまで『話せなくなったら、もうお手上げ! 』だった彼らを『絶望と嫌悪の最期』から救出し『ここまで、生きいてよかった』という思いの中で最期を迎えていただくことを可能にできるのは「あなただけ! !」なのです。どうぞ、彼らの真正面に座り、彼らの目を見つめ、呼吸を合わせてみてください。」とお話されました。