介護・福祉職場のメンタルケア~健康生き生き職場づくり~ 平成29年12月7日、福祉・介護事業所のメンタルヘルスケア研修を開催しました。講師には兵庫産業保健総合支援センターメンタルヘルス対策促進員 波多 勇 氏をお迎えしました。

〔研修のポイント〕
 管理監督者を対象にした「職場を守るためのラインケア研修」をしていても、なかなか職場の改善は進まず、高ストレス者は多い。その人たちが発症していくという事例がなくらない。「仕事と生活を調和」するということは「働く人たちが生活と仕事と両立する」こと。自分の時間を確保する取り組みは強化されてきている。しかし、働き方改革が必要。日本の労働社会は長時間勤務に慣れてしまっている。その結果、時間当たりの1人当りの成果が低い。日本の生産性は先進国の中で最下位。そのような日本的な働き方で長時間働いても世界に勝てない。疲れてしまって何の成長もない中で世界に勝てない。ポイントを押さえる働き方と生活の改善が大事。疲れて先のことを考える余裕がなければ何もできない。長時間労働で成り立っている働き方であるという事を考えなければならない。これは大きな課題である。いまは過当競争や格差が拡大している社会。その結果、私たちの過剰労働時間や競争社会が普通になっているという現実がある。ここが構造的な原点になっている。

 健康な人は、仕事と自分の生活を割り切って考えている。職場を離れたら仕事のことは忘れる。後は自分の生活を守るという考え。考え方一つでストレス状態が違ってくる。脳を休ませるということが大事。仕事で脳が疲れ果ててしまうとそれ以上何もやる気が起こらなくなる。脳が疲れすぎないように適当に休ませる必要がある。そこの切り替えをどう上手にするかが大きなテーマである。

 いじめや嫌がらせ、セクハラ、パワハラなどの職場のハラスメントはどこの職場にもありえる。対人関係は感情の部分でもあるので非常に難しいところでもある。アンガーマネジメント(怒りを静める)には少し間を置くことが必要。信頼関係があれば問題ないが、こういう問題が起こるのは大体、信頼関係がない人同士。信頼関係とは一方的なものでなく総合作用である。気持ちの余裕を失って行動となり、問題が大きくなる。思いやりの気持ち、お互い様の気持ちがあれば、自分がされて嫌なことは他の人にしない。このようなことは、余裕のない職場で起こる。相手の対応や性格、総合作用の問題がある。問題の背景を考えることが必要である。

 職場は構成員の在り方で変わる。いい職場が悪い職場になったり、悪い職場がいい職場になったりする。そこに働いている人の意識や協力体制によって働きやすくも働きにくくもなる。集団分析を行い、改善していく。ストレス対策として、 ①ストレスの原因を避ける、取り除く(往々にして簡単にいかない)、②自分に合ったストレス解消法を持つ(3つのR=Rest(休養)・Recreation(楽しみ、気晴らし)運動・笑う・森林浴など・Relaxation(リラクセーション)をたくさん持つ)、③自分でできない所は早めに相談してサポートを得る(話す事は放すこと)、④ストレス耐性をつける(長い積み重ね)ことが大切である。

 失敗は誰にでもある。失敗をどう取り返して自己効力感に繋げていくか。そこは上司や周りのサポートが大事になってくる。新人、後輩へのサポートは、今できるところから少し高いところへ徐々に上げていくようなアプローチが必要。新人教育体制で自信をつけていくプロセスを踏んでいく。また、セルフケアは「ストレス1日決算主義」を心がける。持ち越さないこと。親しい人たちとの交流や助け合う関係、趣味や楽しみ、瞑想・呼吸法などもよし。適度な運動も効果が大きい(軽い運動でもよい)。

 まとめとして、「考え方のクセに気づき、考え方を見直し、自分の考え方のクセを実感する。気持ちや行動はその時の考え方に左右されるが、バランスのとれた考え方を大切にする。ポジティブな思考がよくて、ネガティブが悪いという訳でなく、どちらも極端な考えというのは良くない。柔軟な考え方ができるとよい。必ずしも楽観だけが良いわけではない。人間関係のコツは「己の欲せざる所は人に施すなかれ」
で、一生守ることができる徳目は思いやりである。思いやりによって副交感神経が働き、心身がリラックスする。脳内では愛情ホルモン“オキシトシン”が分泌され、思いやりを出した方と受けた方と両方に心の安らぎや幸福感が高まる。」とお話されました。