テーマ:「平成30年度 医療と介護・障害サービスの報酬改正の概要と
これからのcommunity-based careについて」
日時:平成30年6月11日
講 師:兵庫県立大学大学院 教授 筒井孝子氏
                     
2018年度診療報酬改定では、診療報酬の一番高い7対1を担保する方法に変えた。どんな病気でどのような治療をしたかというデータを出さないと7対1あるいは10対1の報酬が取れない。このことが介護報酬でどのような影響があるかというと、施設の事業を行なっていれば必ず入ってくる報酬が実績となるように変わってくる可能性が出てきた。つまり、要介護度のデータと、その人たちにどのようなことを提供したのかという、病院と同様の実診療データによることとなる可能性がある。過疎地の地域医療を進めるにあたっては、「病診薬介連携」をしなければならない。介護事業所と組めない病院は残ることができない。居宅介護支援の目的は「医療と介護の連携強化」と示されている。
2018年度介護報酬改定は、訪問看護では看護体制強化加算を300単位から600単位にした。要は終末期を対応しなさいということ。ターミナルは居宅介護のエリアであつたが、介護老人福祉施設もこれからは看取りをしないとやっていけなくなる。また、居宅介護支援では入院時情報連携加算、退院・退所加算もセットで取得していくことが前提。病院との連携をどうしていくのかに変わっている。退院・退所にあたっては、居宅介護支援事業所がカンファレンスに参加するのが前提である。また、医療の知識があるケアマネに参加してもらわないと意味がない。ケアマネは、当然ながら知識を身につけなければならない。
 地域包括ケアシステムと地域医療ビジョンは両輪。地域医療の根幹は地域包括ケアシステムである。適正化した新しい地域医療ビジョンは地域包括システムで受け止められるかということになる。その方法は「情報を知らされた能動的な患者」と「準備が整っていて先を見通す現場のチーム」である。なので「情報を知らされた能動的な患者」を作るしかない。自分の体のことについては、自分が一番エキスパートであり、それを進めるのがセルフマネジメント支援。「川の中を泳いでいる人が溺れないよう、その傍らで泳ぎをコーチする」のがセルフマネジメントモデル。利用者の人にどこまでやってもらうか。入退院支援も同じ。利用者の人が、ちゃんと状態を伝えることができないと退院支援が進まない。介護・医療側の問題ではなく、利用者の意思がどこにあるか。要は、本人がどのように動いてくれるかによって後が全く違ってくる。だから、セルフマネジメントができる人をたくさん作ること。それをするのは病院でも介護側でもない。本人である。日本の脳卒中の1年以内の再発は30.4%。世界の先進国の平均値の3倍。再発患者がすごく多い。入院中に何としてでも再発予防の教育をして再発予防のためのプログラムをセルフマネジメント支援として入れる必要がある。これは病院だけもしくは介護だけではできない。
 介護事業者は、医療のことは「知らない」と言っていられなくなる。どこと組むか、そして持ちこたえられるかどうか。制度に追随していると、サービス業としてイノベーションできない。国の言うことを聞いていても何もイノベーションが起きない。価値を創造するということは、利用者側とサービス提供者側と医療機関と地域社会の価値が高まっているということ。それを介護事業者が示さなければならない。人は増えない。その人に2倍働いてもらうと考えないで、2倍の成果を上げるのにはどうしたらいいのかとなると、イノベーションが必要ということになる。イノベーションをするときに、患者と専門職と病院で重要なものは、患者のセルフマネジメント。それができると再発率が下がる。自分で服薬管理できるだけで、たった2年で再発率が30%から7.4%となったとの報告がある。
 ロイヤリティを作るためにはどうすればいいのか。従業員の満足度が高くないと絶対にできない。価値を高めるために、利用者のためにやっているというが、それは従業員のための事業。従業員の価値を高め、従業員満足度を上げるということは重要なこと。人材が増えないことはだいぶん前からわかっていること。だったらそのことに対して知恵を出すしかない。それを、利用している顧客といっしょに考えられると一番いい(共同生産性)。利用者が積極的に生活支援に参加していることは重要なこと。参加しやすい状況にしなければならない。メリットがあること。これにはテクニックがいるし、新しいチャレンジである。チェンジマネジメント。それをやっていくためにはガバナンスが必要である。
まとめとして、
①保険者機能強化により市町村が果たす役割はますます大きくなる。②地域医療構想、地域包括ケアシステムはPDCAサイクルで、地域全体でツール・ルール・ロールを定めて継続低に取り組むこと。 ③地域包括ケアシステムの構築には、医療・介護連携が必要で、医療介護給付の抑制に効果的なセルフマネジメント支援が必要。
④ケアマネは、キャリアが複雑化するなかで、医療介護人材として、セルフマネジメント支援や医療介護連携に寄与できるかが期待される。と