介護事故予防・事故事故対策研修
2015年11月20日
社会医療法人 慈薫会 介護老人保健施設 大阪緑ヶ丘事務長 柴尾慶次 氏を講師にお招きし、介護事故予防・事故事後対策研修~介護現場における基本視点と取組み~を開催しました。
事故発生時の対応は、初期対応がすべてです。これを誤らないことが鉄則です。利用者の状態が変化していく中で対策本部を設置し、一元管理していくことを組織の中で決定しておかなければ危機管理ができません。事故対策は①救命②安全③通報の順位でほぼ同時にすべてのことを実践する必要があります。リスク要因分析は、インシデント(事前情報・未然情報)の収集が大切で、再発防止のためにはインシデントを多く収集・分析することが、効果が上がります。事前情報としての苦情の中にはリスク情報が多くあり、利用者や家族からの苦情は大切なものです。真っ直ぐ受け止めることで、サポーターになっていただく位の気概・誠意をもって対応していくことです。
事故内容は、転倒が一番多く、続いて誤薬となっており、誤薬事故は感染症より多いのが実態です。死亡事故の発生時間は11 時~ 15 時、17 時~ 19 時で70%です。誤嚥・誤飲を含め、食(食前後)をめぐるリスクが考えられます。
救急搬送は、通報から救急隊が現場到着まで平均8 分30 秒で、病院に搬送できるまでが平均39 分です。「ドリンカーの救命曲線」では、呼吸停止後2 分で蘇生率が90%、3 分で75%、4 分で50%、5 分で25%となっています。8 分30 秒でゼロ近くなります。だから確実に救命蘇生を施さなければなりません。手をこまねいていると過失責任が問われます。
リスクは常に存在するしゼロにすることはできません。このことをインフォームド・コンセント(説明と同意)を行います。そして、他の生活の場があるのかどうかのインフォームド・チョイス(選択)があるのか、また、家族の協力・協働のもとに生活支援を創るインフォームド・オペレーション(創造)を意識していることが大切です。苦情から見えてくることとして、職員の接遇が(対応の仕方が悪いこと)が大きく、サービスの質・量がよくても対人サービスの人の要因が中心であるというリスクが報告されています。事故発生時には、新任職員だから「わからない、できない」は通用しません。勤務の最初から訓練しておくことです。そして事故報告書は事実のみ記するようにします。憶測の入るような様式は、様式自体にリスクがあります。現認した事実のみ記します。事実以外の記録(憶測での記録)は予見可能性を否定できず過失責任を問われます。要介護度が上がると事故の内容が変わります。事故の内容が変わるということは利用者の状態像に変化があるということであるから、それに合わせて介護のあり方を変える必要があります。事故対策は、初期対応のマニュアル、担当者の窓口一本化が大事です。介護事故の責任には4つの責任(道義的・刑事・民事・行政)と7つの処分(謝罪・業務上過失傷害・業務上過失致死・債務不履行責任・不法行為責任・指定取消・効力停止)があります。要支援・要介護の低い方については刑事的・民事的責任を問われなくても道義的責任が免れません。結果の予見性と結果の回避性についてどのように対処していたのか問われます。
まとめとして、事故報告書は報告書を裏付ける記録があること、ケアプランに基づく支援が確実に実施されていること、その記録を残しておくことが重要です。現場において、事故をゼロにするということは不可能に近く、それを前向きに戦略としてリスクマネジメントや事故対策をしていくことがプラスとなります。リスクマネジメントをポジティブにとらえ、施設の戦略としてアピールしていくことが大切です。