法令遵守とプライバシー保護セミナー 平成29年8月25日、株式会社アドバンス・ケアシステム河野次雄氏を講師にお迎えして「法令遵守とプライバシー保護セミナー」を開催しました。

指定取消のあった事業者数の推移を見ると増加傾向にあり、一番多いのは不正請求。不正請求は故意の場合が多い。例えば、週2回の訪問介護を3回にして算定したり、デイサービスの時間を長く算定したりしている。運営基準違反や人員規準違反では、看護師がいないのにいるものとして算定しているケースがあった。虚偽答弁では指導監査の際に、無い資料を、あると返答し、辻褄あわせをしたことが判明して即座に取消しになった例もある。無いものは無いと正直に答えること。その他、窃盗や書類偽造など、たくさんの法令違反事例がある。

以前、全国展開していた大手の法人介護事業所があった。そのうち1箇所で不適切なことがあり、それから次々と同法人の他の事業所の不適切なことが露呈していった。その法人は違反が見つかる前に、具合の悪いところを閉鎖していき不正逃れをしていた。悪質とみなした厚労省は連座制を適用して全部閉鎖するよう命じた事件があった。国は、2010年改正に業務管理体制整備を導入した。1~20人未満の小規模事業所でも「法令遵守責任者」の選任が必要となった。法令遵守責任者は、法令遵守を最優先させるため、①事業所内に法令遵守姿勢を確立させてそれを従業者に徹底させ、②通報相談窓口を設置し、何かあれば、まず法令遵守責任者に報告する体制を事業所内に周知すること、③運営に必要な関係法令が身につけられるよう役職員の立場に応じた関係法令や制度内容の研修機会を確保すること、が求められている。

個人情報保護法(「個人情報の保護に関する法律」)は、2003年成立公布、2005年全面施行となった。それまでは5,000人を超える個人情報を扱う事業所が同法の対象であったが、本年5月に全面改正されてから、5,000人要件が廃止された。1人でも扱う個人事業所も同法対象となる。また、改正された個人情報保護法では「要配慮個人情報」が追加された。本人の同意がなければ取得することや提供することができない。また、匿名加工情報として新たな類型として創設された。①個人が特定されないように加工し、②復元されないようにしなければならない。そうであれば、本人の同意がなくても個人情報を目的外で利用でき、外部に提供が可能。(住所→〇〇県〇〇市、生年月日→削除または生年月、症例が少ない病歴→削除、年齢→110歳を90歳以上にまとめるなど)

後半では、「自分の事業所でどのような法令遵守という観点からの課題があるのか。」というテーマでグループワークを行った。情報管理をいかに徹底するかということが課題として浮かび上がって来た。対策として、①情報持ち出しルールの作成→原則禁止(持ち出す際のルールづくり)、②ケースファイルの管理→施錠管理、③持ち運び個人情報管理ルール→統一した専用BOX、④携帯、スマートフォンの紛失を想定した設定管理→ロック機能(外部から消去できるよう設定)⑤携帯、スマートフォンのメール取り扱いルールの設定→送信後すぐに削除、⑥FAX送信時ルールの設定→登録(登録がないときは3回連呼、複数確認などのしくみ)、⑦FAX送信文書のルール設定→個人情報を伏せ字にする(山田一郎→山〇一〇)、⑧メール添付文書送付時のルール設定→パスワード設定(次のメールでパスワードを送付)、⑨その他、広報誌、ホームページ、研究、実習生対応→学校等との契約が必要である。

まとめとして、「私たちは、介護保険法や同施行法等関連法令以外にも就業規則や社内マニュアル、社会規範など遵守しなければならないことは多い。私たちの仕事は介護保険料で成り立っている。半分は税金、半分は保険料である。65歳以上の方であっても年金から介護保険料を天引きされている。例えば、神戸市の「本人非課税、世帯課税者あり」区分(第5段階)で68,748円/年。全国平均の保険料は、月額5,645円で、それが年金支給月(偶数月)に2か月分が天引きされている。高齢者の方が月5,000円あればいろいろなことができる。それを天引きで徴収されている。65歳以上の方で、要介護認定を受けられている方は、神戸市では19.9%、全国平均17.8%である(2017年1月末)。要介護認定を受けていない、その他の方(80%の方)は、月5,000円ずつの保険料を払っているだけである。自分が将来、介護を受けるかもしれないからというだけで払い続けている。私たちが見えるのは利用者、次に家族である。しかし、その周りには保険料を払い続けている方々がたくさんいる。その人たちで私たちは生活をしている。介護を受けている人たちだけが対象ではない。一般(地域)の目があることを忘れてはならない。こんな中で介護事業を行なっている。だから違反できるわけがない。

40歳以上の方も保険料を払っている。将来、自分が介護を受けるかもしれない。親が介護を受けるかもしれない。その人たちは「介護で働いている人たちはどういう人だろう」と見ている。通勤している服装にしてもチャラチャラしていたら、それを地域の人たちに見られている。私たちは、ご利用者のほうばかりを見がちであるが、地域の人たちの気持ち、地域の人たちに支えられている気持ちがないといけない。襟を正して仕事していかなければならない。その観点が抜けるから「これでいいや」と軽く思ってしまう。社会のルールまで守ってく意識が必要。公金を扱っている仕事であることを忘れてはならない。」とお話され、感銘を受けた研修となりました。