介護事業者の法令遵守研修 【講師】東洋大学ライフデザイン学部 准教授 高野 龍昭氏
【講義内容の要約】
(はじめに)介護保険制度上、法令遵守責任者の配置が規定されています。ベースが「憲法」、国会が決める基本方針が「法律」、閣議で決まるのが施行令(政令)であり、介護保険法上の特定疾病16疾病は、政令です。一般企業では、「コンプライアンス」は死語となり体制構築が図られています。不勉強による法令違反と確信犯がある為、知識習得と法令遵守を意識化する事が必要です。
(現状)<介護サービス関係> 指定取消:「コムスン」の虚偽報告、 「くすの木の郷」東京都区立特養 介護職員の人員基準違反 年間約100件①不正請求②人員欠如③虐待・身体拘束・閉じ込め等によるものが多い。 ※恒常的人員欠如は、減算請求で認められるものでなく本来の基準配置に向け改善を図っていく事が大切。
<障害福祉サービス関係> 指定取消:27件(2012年以降のデータ) ①不正請求②勤務実績のない架空人員が多い。 また、暴力・暴行等、虐待防止体制欠如による効力停止がある。 ※発覚経路は、内部通報(現職・元職)が大半を占め、実地指導、監査へと繋がる。 (対策)公益通報者保護法:まず、①内部優先、事業所内で対応。②行政 (方法)役割を一人の従業者に任せず、多くのスタッフを活用し分担していく。 (改善策)法令違反はある(何が法令違反かを知る)、守れない事が前提の業務である点を認識し、苦情を積極的に聴取 し法令等遵守責任者は配置で終わらせず、課題等を把握し管理者へ報告し組織体制強化を図ること。その為、法令違反 の内容を熟知している現場職員の選任が適切である。コンプライアンスは法人の責務である。 ヘルプライン(コンプライアンスに係る相談窓口)とリスクマネジメントの構築を組織として意識化し、推進することが 大切である。
※内部不正や不適切な行為を内部で解決してくれないといった不平不満等を除去。企業等、近年の漏洩リスクの高まりと個人情報の価値は高い。福祉や介護の業界では、守秘義務(出生地・職歴・病歴・犯罪歴・尿漏れは?等)に関連する内容が多様、センシティブな内容等、保護すべき個人情報が多い。鍵付きロッカーでの保管。
(最後に)法令違反等は、福祉・介護サービスの規制強化に繋がる為、そうならない取組みが必要であり、自律的に倫理観の有る活動が求められ、私たち一人ひとりが法令遵守をすすめる事が大切です。不正は、結果として弱者である利用者の負担を増やしサービスの質の低下をまねく為、利用者の権利擁護の一環として捉える事が重要ですと話されました