講演会「介護予防・日常生活支援総合事業の考え方と今後の動向」
2016年6月17日
講演会テーマに沿って、兵庫県各市町の状況と県の動き、先行して事業実施している豊岡市の現況及び国の施策について3氏からご講演していただきました。
兵庫県高齢社会局高齢対策課の森山氏からは、「地域支援事業にかかる兵庫県の状況」と題して兵庫県の現状について、次のようにお話していただきました。
「兵庫県内では、都市部とそれ以外の地域では高齢化の状況に差がある。平成27年度は4市町が総合事業に移行しており、ほとんどが平成29年度に移行予定となっている。今年度は移行に向けて具体的なテーマを設けて重点的な支援を行っていくこととし、市町向けの介護予防ケアマネの研修や生活支援協議体のコーディネーター研修についても実施したい。新規事業として今年度から、基準緩和訪問型(A型)や移動支援についての研修を実施し、従来から県のモデル事業として実施している特養や地域の高齢者の見守りを行う地域型サポート事業の取組の強化に努めていきたい。」
最後に、「地域包括ケアの実現のためには、地域に根付いたケアと他職種連携による包括なケアが必要であるので、皆様の協力をお願いしたい。」と締めくくられました。
豊岡市健康福祉部高年介護課の神谷氏からは、今年度から総合事業に移行している豊岡市の現状について、次のようにお話していただきました。
「総合事業が市の事業なので、地域の高齢者の状態に対応した効果的・効率的なサービスを実施していくこととした。具体的なサービスとしては、現行の予防給付と同じサービス(「予防給付基準サービス」平成27年4月開始)と、地域と団体が協力して提供する介護予防・生活支援サービス(「支え合いサービス」平成27年10月開始)を設定した。事業のコンセプトは地域連携で、地域住民代表も加わった「運営推進会議」を設置している。今後、協議体が立ち上がれば「運営推進会議」と統合していく予定である。これまでの身体介護については、今までと同じサービスを受けることができ、サービスがいらない場合は「支え合いサービス」の中で実施し、徐々に専門的サービスに移行していく、というイメージで事業を展開していきたい。」とのことでした。
続いて、国立社会保障・人口問題研究所社会保障基礎理論研究部の川越氏からは、総合事業の今後の動向などについて、次のようにお話していただきました。
「2025年に団塊の人たちが75歳に到達するが、2040年にはその方々が90歳を迎えることとなるので、その人口構造の背景を理解する必要がある。兵庫県は今後、働き手となる人口が100万人も減ることとなるので担い手の確保が困難となる。その一つとして元気な高齢者が担い手に回るということになる。また、高齢化率は全国平均より低いほうであるが、これからますます高齢化が進み、10人に1人が高齢者となる。
85歳以上の人口は、2025年までに2倍に増え、これが2040年まで増え続ける。しかも若い人が100万人以上減るうえ、85歳以上の1/2が介護保険利用対象者となる。だから医療・介護の仕組みを変えていかなければならないことになる。兵庫県は高齢者の割合が全国の伸び率よりも高く、認定率も全国を上回っているので、財政的にも厳しくなる可能性がある。
また、介護サービスを使う人が増えていく半面、支えていく側の人が減っていきバランスが崩れていく。要支援・要介護状態の人を増えないようにすることと要介護状態の人の重度化を防ぐことが必要となる。だから介護予防は、強化するということになり、総合事業は生活支援よりも介護予防をベースにした事業が主となる。
資源は地域によってさまざまだから、その資源を有効に、事業を進めてく必要がある。サービスの質・量、マネジメントなど市町ごとに決めていくこととなるので、市町の役割は重要となる。要介護3~5の中重度者のなかには在宅で医療を受けるケースが増えてくる。だから在宅医療と介護の強化が必要となってくる。「在宅医療介護の連携推進」が重要なポイントである。
総合事業は、生活支援サービスと地域支援事業を一体的に提供するものである。自分がどうなりたいか、どう変わりたいのか、とのように地域で貢献できるのかなどのニーズに則して自己実現できるようアセスメントしていく必要がある。運動機能や栄養状態などの心身機能を改善するだけでなく、日常生活の活動性を高め、家庭や社会への参加を促し、QOLの向上を目指ことが大切である。そして、改善したあとに地域で引き続き通えるような場所や社会参加していけるような場所づくりが必要である。マネジメントとサービスがあって自立支援でき、ある程度目標が達成すれば、地域において社会参加していくという全体の流れのあるものが総合事業である。
総合事業は、ベースに介護予防ケアマネジメントがあり、そのうえで、訪問型のサービスや通所系サービスがある。専門職が関わるサービスもあれば、専門職以外の者が関わるサービスもある。その全体を見据えて事業の必要量を考え、どのくらいのサービスをつくるかということが本来の市町の仕事になる。また、専門職は専門職としての役割を発揮していくことが重要となってくる。」
最後に、「介護事業所は卒業させていくことで評価が高くなるようになっていく。そのようにして総合事業が成り立っていくものである。」と締めくくられました。