高齢者・障害者虐待防止セミナー 平成28年8月5日、障害者・高齢者の権利擁護をライフワークとされている上本町法律総合事務所の弁護士池田直樹氏を講師にお迎えし、高齢者・障害者虐待つ防止セミナーを開催しました。

虐待となりうるケースでは、もともと福祉の仕事に関わりたいと思って入職した職場であるものの、介護従事者の人間の弱さの一面が出て来ることによることが大きく、職場がそれに対応する環境が作られていないのではないか考えられます。虐待をした人を攻めるのではなく、虐待をしてしまった職場の管理者や上司との風通しが悪くなって、不満を持っている職員の気持ちを受け切れなかったことのストレスが利用者に向かう行動になることがあります。

犯罪はその行為を行うかどうかの境があり、踏みとどまることが抑止であり、誰もがその境で思い留まっていると言えます。虐待は悪いとわかっていながら踏み留まる事ができないから生じてしまいます。そこを強化していく必要があります。

オンブズマンの派遣は、「オンブズマンがいつ来られるかわからない、いつでも見られている」という状況になり、感情をコントロールし、理性のある仕事がいつも出来ていることに繋がっています。これは虐待に繋がらないための予防的措置と捉える事ができます。また、他の施設との職員交流会を催し、他の施設職員と話す中でのギャップに気づき、自分の判断基準を理解することできます。交流する事で事業所の質も変わってきます。

厚労省の実態調査によれば、施設等における虐待相談通報件数は近年少しずつ増えています。虐待そのものが増えたのではなく、虐待に関する意識が、施設や家族で高くなっていることによるものと思われます。また、通報して虐待と判断されない場合でも、通報があるということは問題のあるケースだったのだろうと思われます。寝たきり度と虐待の関係では、施設において被虐待高齢者は寝たきり度の高い人に多く、心理的虐待は軽度者へのものが多い傾向にあります。反応がないということは攻撃度が低くなります。動ける人は行動・言葉があるので心理的虐待になりやすく、また、虐待者の傾向では男性からの虐待が多く、年齢別では40歳台未満の職員(20~30歳)が多いようです。本来したい仕事ではないかもしれないし、若いので打たれ弱いことにもよります。同世代の者と比べ仕事に誇りが持てていないことや仕事へのコンプレックス・不満があると考えられます。

在宅での虐待の防止と対応のポイントは、①未然防止→虐待の芽を早く気づく ②早期発見→ 事件性が高まる前に分離(早期分離)→支援体制(介護力)→家族の再統合(ヘルパーが入ることが他人の目となる)③本人の自己決定が難しい場合は安全確保を最優先→養護者支援 ④養護者支援 ⑤支援体制再構築(弁護士などへの相談)となります。

また、虐待の判断に当たって虐待の自覚がない場合の気づきは、他の目が必要です。虐待行為が認識できない場合は積極的な周囲の介入が必要です。家族が「これくらいのことは仕方がない」と擁護したり、また、虐待を否定する場合においては、虐待の客観的事実を確認(本人の支援を中心)し、不適切な介護への改善が必要です。施設では、虐待事案の判断は組織的に行い、管理職の虐待問題への厳しい姿勢と虐待防止委員会において何でも意見の言いやすい環境をつくることです。組織が守るべき最大のことは、利用者の尊厳です。

最後に「施設(地域の事業所)は介護の拠点、コミュニティーの拠点です。また、そのノウハウは地域に還元すべきです。昔は、施設は隔離されたところにありましたが、今は地域の中にあります。入所している人も地域の一員であるという考え方に変わってきています。施設は、地域を良くするために果たす役割があります。施設が専門性を生かし、地域に還元すべきものは何か、求められているものは何かを考えながら活動していくべきです。」と締めくくられました。